協会について - 文化財石垣・石積擁壁補強技術協会

文化財石垣・石積擁壁補強技術協会は、
石垣の基礎補強技術の研究と、次世代への継承を目的として設立されました。各分野に精通した協会員により組織され、日本全国に点在する歴史的・学術的価値の高い文化遺産の保全に努めます。

設立発起人代表　

国士舘大学理工学部教授

橋本隆雄

　2011年東日本大震災では福島県白河市にある小峰城で石垣が10か所約7,000個崩落した。2016年熊本地震では1966年から2015年までに崩壊した石垣を修復した熊本城の８割以上が再び崩壊した。また，香川県丸亀城では，2018年7月の西日本豪雨及び同年10月の台風24号で修復箇所が孕みだし，3度目の崩落が発生した。今後，これまで被害の無かった箇所の多くの文化的遺産である石垣が孕み等の変状を生じ，次の地震・豪雨により崩壊する恐れがある。しかし，石垣の孕み等の変状に対して，これまで解体から積直しに至る過程を取るため膨大な時間とコストが掛り，歴史的文化的遺産を失うことになる。また，これらの補強工法は，これまで実績がないため未着手の状態で，全国の経年劣化した石垣が近年孕みだし，多くの地域で補強対策が強く望まれている。文化庁『石垣修理のてびき』では、その施工に当たって「歴史の証拠」と「安定した構造体」という二つの異なる石垣の本質が堅持されなければならないと規定している。私たちは、このような理念を実現するには、石垣の状況確認し、問題があれば極力現状維持したままで補修・補強して既存の石垣の耐震性能を備えた保存と伝承を図るって行くことが第一だと考える。しかしながら、未だ土木・地盤工学分野の視点で十分な対策技術が確立されていないのが現状である。これは石垣の補修・補強技術の重要性が理解されていないこと、及び実施しようとしても具体的な対策方法が分からないこと、さらに技術基準を普及・啓発するための制度や組織が整備されてこなかったことが原因として考えられる。　そこで，城壁及び伝統的建造物群石垣の孕み等の変状に対して施工・模型実験，高度な解析により，美観を損なわずに耐震性を向上させる石垣の補修・補強対策工法構築し、その技術を広く全国に普及させることを目的として積極的かつ恒常的に活動するために協会として運営推進するのが肝要であると考える。よってここに、文化財石垣補修・補強技術協会の設立を発起する次第である。

2020年3月22日